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ある家庭教師の独り言

夏休みは大胆な勉強を

 もうすぐ夏休み。言うまでもなく受験生にとっては大事な時期だし、チャレンジの時期でもあるだろう。

 勉強が順調に進んできた高3生は、夏休みに初めて受験校の過去問を解いてみる場合も多いと思うが、多くの人にとっては、えっ、こんなに難しいの、こんなに量が多いの、という印象を持つだろう。場合によっては、こんなの無理じゃないかとさえ思えるかもしれないが、夏休みはまさにこうしたことにチャレンジすべき時だ。

 そもそもこの時期に入試問題を見て難しいと思うのは当然だし、特に第一志望とする学校ならなおさらだ。ただ入試問題は全部分からなくてもよいのだ。合格者だって長文が全部読めている訳ではないし、出てくる単語を全部知っている訳ではない。分からない部分は前後の文脈から推測したり、場合によっては読み飛ばしたり(設問に関係ないところもある)しながら、時間が限られ焦りながらも頭をフル回転させて、肝心な内容はしっかりつかみ、何とか合格点に届かせているのだ。

 こうした入試本番で要求されることをとりわけ意識した勉強は、高3の夏休み以前にはあまりしていないと思われるので、違和感があるかもしれない。またそれまでの勉強は、出された課題は隅々まできちんとこなすというのが普通だったはずなので(もちろんそうしたことが受験勉強でも基盤となるのだが)、大体分かればいいといったアバウトなやり方には、勉強の達成感が持ちにくいかもしれない。

 でも難しくて量が多く、時間も限られる入試本番で、きっちり納得がいくまで考えるなどというのは所詮無理なので、いつかは本番の環境での頭の使い方を学ぶ勉強が必要なのだが、それをするにはやはり夏休みがうってつけだ。もちろん勉強にアバウトさを取り入れながらも、そこで見つかった新たな課題には、じっくり向き合って解決することも必要だが。

 一方で大幅に遅れをとってしまった人にとっても、夏休みは挽回の時期だが、そういう人が一番やってはいけないのが、ただ漫然と問題集を解くことだ。

 そもそも英語で後れをとっている人のほとんどは、必要な単語を覚えていない。なので問題集の英文だって読もうにも読めないはず。そうした状況で問題集をやっても、ただやったということに満足感を得るか、すぐに解説を見て分かった気になるか(もちろん本番の練習には全くならない)、目標とするレベルより大幅に易しいものをやるか(速読力養成に必要な勉強でもあるが、これだけではレベルアップがない)、という程度に留まってしまう。本来問題集を解くことは別に間違った勉強ではないが、大幅に遅れた人にとっては、凄く中途半端な勉強となってしまう。

 なので、例えば単語集の中級レベル辺りまで覚えていないのならば、脇目も振らずに単語暗記に徹するべきだ。学校のない夏休みはそれがやりやすい。まあ単語暗記だけでは、精神的につらいものもあるだろうから、他の問題集などを副次的にやってもよいが、一番の目標は単語暗記にすべきだ。

 受験の英語は、単語を覚えていれば全てが片付く訳ではもちろんないが、でも単語を覚えていないと何も出来ない。単語さえ覚えていれば、持ち前の思考力を発揮して、何とか解決できる問題はあるはずだが、単語が全く分からなければ思考力も発揮させようがない。こうした点でもまずは単語なのだ。

 とまあ、出来る人も出来ない人も、夏休みは大胆な勉強をしてみてはどうだろう。自分を大きく変えるためにも。