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ある家庭教師の独り言

インターネットの恩恵

 私が今のような形で仕事ができているのは、全くもってインターネットのおかげだ。扱う生徒は少数だが、広範囲の地域を対象とするというやり方は、インターネットがなければできないことだ。

 振り返ると、私がインターネットを始めたのは1995年、パソコンを世に広く普及させるきっかけとなった、ウィンドウズ95が出てからだ。このウィンドウズ95というOSが販売された時は、今からすれば不思議なほどのお祭り騒ぎだった。元々インターネットとは凄い技術だということは、何となく知っていたが、ウィンドウズ95を買い求める人だかりの映像を何度も見せられるにつけ、これは今すぐ、パソコンを買ってインターネットを始めなければ、という気分になった。新しいものにすぐに飛びつかない私にしては珍しかったが、それほどインターネットは凄いものだと、直感的に感じていたのだ。

 実際にインターネットを使ってみると、想像以上に凄いものだった。初めて使った時の興奮は今でも忘れない。好きな時に好きなだけ、国内外を問わず、大きな組織が発するオフィシャルな情報から、一個人が発するたわいない情報まで、フルカラーの画像などもついて、何でも手に入った。これは今となれば普通のことだが、それまでにはない本当に画期的なことだった。当時、インターネットは産業革命以来の大変革だと言った評論家がいたが、全くその通りだと思った。そして現在、インターネットが世界に与えた、計り知れないほどの影響は周知の通りだ。

 情報の入手もさることながら、インターネットでさらに凄いのが、誰でも簡単に、しかも全世界に向けて情報を発信できることだ。これも今ではすっかり普通のことになってしまったが、それまでは、全世界どころか、国内であっても多くの人に情報を発信するには、テレビで放送してもらう、出版社と掛け合って本を出版してもらうなどの方法しかなく、私のような平凡な一個人には、事実上無理だったわけで、やはりこれは大変革なのだ。

 当時私は、何としても多数の人に訴えたいことがあった訳ではないが、この時代の大変革の波には乗ってみたいという思いがあり、パソコンを買った翌年(1996年)に早速ホームページを作って公開した。その頃私は某塾に勤めていたが、商用のホームページではなく、個人的に勉強法や受験に対する意見を述べてみたり、特徴のある入試問題を紹介、解説したりといった、手作り感満載の、ささやかなものだった。ちなみに当時は、ブログも、Facebookも、Twitterもなく、独学でhtmlを学んで、一からホームページを作った。そんなホームページでも、全国から、はたまた海外から(海外赴任の日本人の方だったが)結構意見や質問が寄せられ、改めてインターネットの威力を実感した。

 このように、感嘆しきりのインターネットだが、最終的に私がそこから受けている恩恵は、一個人が多くの人に情報を発することができるという、インターネットのまさに本質的なことよりも、少数の人により訴えが届くようになったこと、延いては、小規模のまま事業を継続するのが可能になったことと言える。

 インターネットの登場以前、学習塾のようなところは、狭い範囲限定で小規模で運営するか、広い範囲を対象にして大規模で運営するかの、どちらかしかなかったように思う。それがインターネットにより、広い範囲を対象にしながら小規模で運営することも可能になったのだ。インターネットは、広範囲の人に、ほとんど費用をかけずに、情報を伝えることができるからだ。狭い範囲では、私が提供するサービスへの需要は、事業が継続できるほどはないかもしれないが、広範囲を対象とすれば、そうした需要が生み出せる。そしてそれがいとも簡単に、インターネットでできるようになったのだ。

 実際今の私のように、東京から3人、神奈川から2人、埼玉から2人、千葉から1人などという形で、生徒に来てもらっているのは、まさにインターネットがあってこそだ。

 一方、現在私が仕事でインターネットを利用しているのは、主に宣伝、さらには、生徒が授業で用いた教材やテストを復習のために、ダウンロードできるようにしていることだ。インターネットを介した指導は、現在していないし、当面しないと思う。あくまでもやりたいのは、人が直接対面して行う指導だ。やはり他の方法と比べて、伝わるものが圧倒的に多いからだ。でも、多大な恩恵を受けたインターネット、そしてまだまだ大きな可能性を秘めたインターネット、その可能性を閉ざさず、今後も自分なりに上手な使い方をしていきたいと思う。