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ある家庭教師の独り言

400年に3回うるう年がない 英語長文は小ネタの宝庫 その2

 先月話題にした小ネタの続きだが、取り上げるのは 2014年 慶応大(理工)第1問の長文だ。解こうと思っている受験生は、ネタバレになるのでご注意を。

 その長文のテーマは、人は外向的でなければならない、とするアメリカの文化に対する異論だ。そこには、アメリカは個性を尊重すると言いながら、外向的な性格しか認めない風潮があること、アメリカでも、外向的なふりをしているだけで、実は内向的な人も結構いること(統計によれば国民の1/2から1/3)、外向的な性格のみを理想とするのは間違いで、偉大な思想や発明は、自分の内面と静かに向き合うことから生まれていることも意識すべきだということ、などが書かれていた。

 この話は、面白いという類のものではないかもしれないが、何となく固定観念として持ってしまっていた、アメリカ人の国民性が覆され、本音の部分が垣間見えたというところで、興味深かった。

 そもそもアメリカ人は、それこそ全員明るいのだろう、というくらいのイメージがあったが、よく考えてみれば、3億人もいるアメリカ人全員が明るいというのもおかしな話で、やはりそんなことはなかったのね、という何か腑に落ちた思いだ。

 自由の国アメリカで、外向的でなければならないという心理的圧力がかかる、というのは意外だが、これに異を唱える意見が正々堂々と提示されるのも、やはり自由の国アメリカらしいなと、改めてアメリカのダイナミズムを感じる。

 ちなみにこの長文は、Susan Cain(スーザン・ケイン)のQuietという本からの抜粋のようだが、この話は、TEDが主催する有名なプレゼンイベントで、The power of introverts(内向的な人のパワー)という題で、Cain自身が2012年に講演している。NHKのEテレでも放送されていたし、ネットでは今でも見られる。

 それを見ると、入試長文の抜粋には載っていない核心部分が分かり、一層興味深い。現在世の中で私たちが直面している問題は、大きく複雑で、多くの人が協力しなければ解決できないことが多いが、だからと言って、常にグループ作業で皆でワイワイ事を進めるのもおかしい。まずは各人が一人静かにじっくり考えてアイデアを出し、それからそのアイデアを持ち寄って、ほどよく話し合うという方が、よい解決策が出せたりする。こうしたことができない、つまり内向的な人が力を発揮できない状況は、社会的にも損失だと、Cainは主張している。

 講演でCainは、自身の子供時代のサマーキャンプの体験も語っていた。皆で活動的にやるという精神を植えつけるために、全員でリズムに乗って「にぎやかに行こう!」などと何度も唱えさせられ、ちょっと一人で本を読もうとしたら、世話役の人が心配そうな顔でやって来て、皆で楽しくやらなければダメじゃないか、と言われたそうだ。こうした話を聞くと、アメリカでは、内向的だと本当に気苦労が多いのだな、ということが実感として伝わる。

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 さて全く話は変わるが、皆さんは、400年に3回、うるう年のはずなのにうるう年でない年があるのをご存知だろうか?

 言うまでもなく、うるう年は4年に1回やってくる。地球は太陽の周りを、約365と1/4日で回っていて、4年で約1日分足りなくなるので、それを補うためだ。

 しかしここでちょうど1日分を足すと、今度はほんの少し余剰分が生じ、それが400年で約3日分となるのだ。なので、この余った3日分を削るため、400年に3回、うるう年のはずの年をうるう年にせずに調整するのだ。

 ではどの年をうるう年にしないかというと、それは、400で割り切れない00で終わる年だ。だから、400で割り切れない1700年、1800年、1900年はうるう年でなかった。でも2000年は割り切れるので、通常通りうるう年だったのだ。

 私はこの話を何で知ったかと言うと、やはり英語の長文だ。それも20年以上も前の、1994年の桐朋高校の入試問題だ(こちらは大昔のものなので、ネタバレは気にせず・・・)。

 ちなみに2000年は普通にうるう年だったが、上述のことから、考えようによっては400年に1回の珍しい年とも言えた。なのでその年に、ニュースなどで報道があるのかなと思っていたが、残念ながらなかったように思う。

 それどころか私は、上記の事実を、その英語長文でしか見ていない。知り合いからも聞いた覚えはないし、学校でも習った記憶はないし(教えたという先生がいたのかもしれないが)、テレビなどでも見た覚えはない。つまり私は、1994年にその英語長文を見なければ、未だにその事実を知らなかったかもしれないのだ。やはり英語長文は、小ネタの宝庫なのだ。